「Dance New Air」の前身のフェスティバルがスタートしてから15年、ダンスを取り巻く環境は大きく変貌し、「ダンス」と呼ばれる表現は年々多様化してきています。観て楽しむ人も自身で踊る人も増え、身近なものとなりましたが、一方で、分かりやすく直接的な表現を好む傾向が強く、一見すると近寄りがたいダンスが有する、奥深い表現に隠されている魅力をもっと多くの方々へ届けたい思いが年々強くなっています。
私たちが2002年から紹介してきた200を越える作品の数々は、どれひとつとっても一つのジャンルには収まりきらない、カテゴライズされることのできない珠玉の表現ばかりです。8回目を迎える今回は「身体を透してみえてくるもの」をキーワードに、琴線に訴えてくる圧倒的な力を携えた作品をラインアップしています。創り手の奥底にある情感が身体を透して産み出された時、私たちの目にうつる光景はどのようなものでしょうか。
身体を媒介にして表現するものとしてはスポーツ競技のほうが身近であるかもしれません。アートの語源であるラテン語の「ars(アルス)」が、その語源をさらに辿ると技術を意味する「thchne(テクネ)」であるように、アートの領域である表現豊かなダンスと技術的側面を強く評価されるスポーツの2つは近しい関係であるともいえます。トップアスリートが試合中に「ゾーン」に入ると呼ばれる極限の集中状態は、ダンサーが舞台上で神が宿り、何かが憑依したような状態になることにも通じます。東京で開催される世界的なスポーツの大祭典を2年後に控えた今、この2つを客観的に捉えるには良い機会です。
Dance New Airは東京・青山を中心に、劇場空間だけではなく、屋外のスペースや映画館、ブックセンターなど様々な場所を舞台にダンスを透して新たな可能性を提案していきます。また、未来へ向けて身体表現を主とするアーティストたちの活躍をバックアップし、活性化するためのプラットフォームとしても邁進していきます。