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川口隆夫(ダンサー/パフォーマー)
ふくだぺろ(マルチモーダル人類学者/詩人)

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分断されることで、隣同士なんだ、くっついているんだという逆の意識が働く

 

私たちはどうしたら乗り越えられるか

ー INOUTSIDEは、「ウイルスがヒントをくれる未来」をテーマの主軸に据える。

川口 「ウイルスは、色々なものにくっついて宿主の中に入り込み、複製され、増殖していく。それが宿主を壊していくということではあるのですが、色々なものに適応していくオープンさ、様々な状況に入り込み自分を展開していく、という側面は、興味深くもあること」

ー このプロジェクトでは、作り込んだ作品を舞台上で提示するのではなく、アーティストやパフォーマー、研究者などジャンルを超えて呼び込み、フレキシブルに様々なプログラムを動かす。

川口 「パフォーマンス、トーク、ワークショップや展示など、建物の”体”のいろんな部位で、色々なことが起きていく。全館まるごとの2日間、可能であればお客さんもずっといて、出たり入ったりしながら、いろんなことを見たり聞いたり話したりできるなら、それってすごく、ウイルス的」

ふくだ 「ロックダウンやソーシャルディスタンスで、単純に、人といるということが難しくなってきている中、ウイルスについて話す、考える。それができる場所を作りたい、というのも、そもそもの思いとしてはあります」

 

分断されることで、逆に繋がりを意識する

ー このプロジェクトの始まりは、2017年。最初は、HIVにフォーカスしていた。

川口 「HIV/エイズの世界的な感染が始まってからおよそ40年経っていますけど、HIVを取り巻くイメージは、やはり今でも厳しいものがある。僕らはそれをどのようにしたら乗り越えられるか。ポジティブな、身近なこととして考えられるか。それが出発点でした」  

ー そこに、コロナウイルスによるパンデミックが世界的に起きた。世界の反応は、HIVの時のそれとは全く違うものの、「分断」が顕著になるという共通項があった。むしろコロナウイルスでは、アクリル板など、隔離が分断を強調する。

川口 「ただ、分断は、分断されたこちら側と向こう側をぐっと引き寄せ、実は接しているような意識を生む。普段は隣の人を意識すらしなかったのに、分断されることで一種の緊張感が生まれると同時に、隣同士なんだ、くっついているんだという逆の意識が働く、ということもあるかな、と思う。それは、つながり、ということでもある」

ー 一見、分断と見えるものが、実はつながっている、ということ。

ふくだ 「これは、地域や個人の違いでも同じ。東京、京都、パリや他の違う街でこのプロジェクトを行う。それぞれローカルのアーティストを呼び込むことによって、ウイルスに対する異なった見方を引き出していく。そうすることで初めて、むしろ共通するものが見えてくるとも思います。今、パンデミックが世界的な状況になっているこの時に、ひとつひとつ、そうした作業を細かく積み上げていく必要があるのかな、と思います。通常、アートは、答えを出すものではないですけれど、通常以上に、答えを出すスタンスを避けて」

ー INOUTSIDE。隙間なく並べられた文字。INとOUTの境界線は見えなくなって、そこに接点はあるのか。私たちはどこにいくのか。問いかけられているようだ。

INOUTSIDEは、ダヴィデ・ヴォンパク(フランス人振付家/ダンサー)、川口隆夫(ダンサー/パフォーマー)、ふくだぺろ(マルチモーダル映像人類学者/詩人)の3人によるプロジェクト作品。

 

2021年8月11日取材
写真:室岡小百合
インタビュー・文:森 祐子
場所:スパイラルホール

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