Artist Interview→
ー ダンスショウケースは、今を疾走する若手アーティスト4組の作品をぎゅっと詰め込んだプログラム。自ら出演アーティストの一人ともなる橋本ロマンスが、他の3組とのセットアップをキュレーションした。セレクトの軸は「未来への意思表明」。橋本自身がまだ見たことがない、誰にとっても新しい一歩となる地点へ。未知数ながら新しいことを共有できると確信する強さのあるアーティストに声をかけた。
「既存のカテゴリーや枠の中でやるのではなく、自分だけのスタイルを確立しようとしている人たち。純度の高い者同士、でもそれぞれ性質が違う……例えば土星、木星、火星、水星、というように、単体でも完結する強い存在が集まってできることをしたかった」と橋本は言う。
ー 橋本自身の作品は、ファッション性の高いビジュアルと音を持ちながら、コンセプトの芯が硬い。その両輪が、見るものの目を惹きつけて、奥へと引き込む。
「踊るという行為をした後に、世界が自分にとって変わっていないと意味がないと思っています。私が踊りと呼びたいのは、呪術的なこと。祈りであり呪いであり、何かを変えるために、願うために、目的を持って体を動かすという、技術ではなく、行為」
ー 公演は儀式。観客は、目撃者というほうがふさわしいという。
「”お客様にきれいに包んでお渡しするところまでが作品”というような安全なものは作りたくない。ここで起こることは、観客がいてもいなくても、変わらない。観客の存在は、そこに事件の目撃者がいたかどうか、というような感覚です。作品の中で起きていることと現実の世界は、切り離されたものとして考えられがちだと思うのですが、あくまで地続きであるということがとても重要で、見ている人にも責任が生じる。ある意味では共犯的な関係です。見たものに対してNOと言うかYESと言うのか。どこかで自分にも関係していると思ってほしい、他人事だと思わないでほしい、という気持ちを持っています」
ー 今作では、きっと社会の構造や、東京という都市の今の姿を意識してつくることになる、と橋本は言う。
「オリンピックが開催されて、10月には衆院選もある。そういうムードの中で、一体私たちの責任の所在はどこにあるのか。それがどう未来に向かっていくのか、ということの意思表明になるかな、と思っています。
怒っています、すごく。ずっと怒っています。そして、私たちがアーティストである前に、社会の一員である、と言う責任について、すごく考えています。表現と責任はほとんど同じであると自覚しないといけない。危機感をもって、自分の責任を見つめています」
ー 表現には責任が伴う、と語る姿勢が凛として美しい。
2021年8月11日 取材
写真:室岡小百合
インタビュー・文:森 祐子
場所:スパイラルホール